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Channel: ミロスラフ・メシールのテニス Miloslav Mecir's Tennis
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Mecir's Tennis (180) テイクバックで肩を入れるためにラケットをうまく使いましょう

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フォアハンドミスの一つに、左肩が十分に入らないということがあります。いわゆる、体が開くという症状です。

これを避けるために、テイクバックでラケットをうまく使う方法があります。つまり、左手でラケットを持ってそのラケットを(体の前で)ボールの飛球方向と平行になるまで回すイメージです。
これにより、いくつかの利点があります。
  • 左肩がきちんとネット方向を向く。
  • 左手でラケットを持つためにテイクバックが大きくなりすぎない。
  • ラケットとボール(の飛球線)の距離を取ることでボールに近づきすぎない。
  • どんな時でも(たとえばランニングショットや高い打点の時でも)ボールと体(=ラケット)の距離を一定に保つことができる
フォワードスイングでは、ラケットを持っていた左手を前に出していき、その力で体を(フォワードスイング側に)回していきます。そのタイミングは、遅すぎると振り遅れます。スイングよりも早く左手を前に出していくイメージが大切です。早すぎても構いません。(どちらにしても、右腕は送れて出てくるのですから。)

全米オープン2013 男子1回戦 あっという間の錦織敗退

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何の気なしにテレビをつけていたら錦織の1回戦が始まったので、初めから終わりまで観戦してしまいました。観戦する気がなかったという事は、つまり、「今の錦織だったら1回戦敗退はないだろう」と思っていたという事です。こんなふうに、今の錦織のことを「当然のように3回戦、4回戦にまで進む選手」というイメージで思っている人は多いのではないかと思います。

が、フェデラーだって、ナダルだって、1週目に敗退するのです。錦織がそうなっても決しておかしくはないのです。でも、それにはやはり理由があるはずです。今の錦織は、もはや理由なく早いラウンドで敗退する選手ではないでしょう。

実際、ゲームを見ていた印象では、200位近いランキングの英国の選手(ダニエル・エバンス)は、十分に強かった。ランキングから想像されるひ弱さは全く感じませんでした。一方で、錦織についても、そんなにひどいプレーのようには、私には見えませんでした。(最後の数ゲームは勝利をあきらめてしまったようでしたが。)

グランドスラムで錦織の早いラウンドのゲームを観ることが少ないので、私の想像なのですが、同じ「3回戦、4回戦までは当たり前に勝ちあがる」プレーヤーの中でも、トップ10の選手と錦織はちょっと勝ち上がり方が違うのかなと思いました。多くのトッププレーヤーは何かしらの強烈な武器を持っており、調子がまだ十分に出ていない早いラウンドであっても、たとえば調子が70%ぐらいであっても、その武器で相手を押し切ってしまうのでしょう。

その点、錦織はこれといった圧倒的な武器を持っているわけではないので、早いラウンドから自分のプレーを例えば90点以上で出さねばなりません。それが80%以下に落ちてしまった場合には、相手が90%のプレーをした場合に早いラウンドでも勝利は危うくなります。

試合を見ながら、「錦織の武器は、特定のショットではなく、早いラウンドでも90%の力を出すことができることそのものなのかな」と、ふと思ったりしました。これは、毎週のように世界のどこかで戦う選手にはなかなか辛い条件です。錦織はどのラウンドであっても90%の力が出ないと、自分の武器を失うという事になります。

常に高いアベレージでの能力を発揮することができることは、安定したプレーにつながります。これが錦織の取りこぼしの数を減らし、早い段階での敗退を減らし、ファンたちがドローを見ながら「錦織が負けるとしたら4回戦の○○選手(シード選手)」などと考える理由なのでしょう。

錦織が90%の力を出すという意味の中には、ゲームの早い段階で相手の弱点や自分がポイントを取るパターンを見つけ出し、それを確立するという事があるように思います。錦織は、いったん自分のパターンを確立すると、そのパターンを軸として、今度はパターンにバリエーションを付けたり、またはそのパターンを逆手にとったりしながらゲームを自在に作っていきます。

実際、このゲームも、第1セットでリードするまでは、自分のパターンを作りつつあるように私には見えました。しかし、相手のペースが上がってきて、その軸がぶれだしたときには、軸となるパターンを修正しながらのゲームとなります。錦織にとって都合がよいのは、相手が(自分にとって嫌な)パターンを崩そうとしてプレーに強引さや無理が出てくることで、逆に自らミスを重ねていく場合です。おそらく、これが錦織にはもっとも「都合の良い」ゲーム運びなのでしょう。錦織のゲームで、そのような勝ち方をすることを時々見ます。

一方で、このゲームのエバンスのように自ら崩れることなくプレーを修正することで(つまりプレーの精度を上げることで)パターンをずらしてこられた場合には、錦織は別のパターンを考えなくてはならなくなります。その部分に、まだ錦織の若さというか、未熟さを感じます。今回の敗退は、そこで次のパターンを作ることもできず、また、今のパターンを軸として自分に有利なパターンに仕上げていくこともできなかったことにあるように感じました。

ショットのパターンではなく、プレーのパターンを複数持つことができ、さらにそれらを組み合わせて試合を進めることができる時、錦織はさらに強くなるのかもしれません。

Mecir's Tennis (181) なぜインサイドアウトなのか

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現代テニスでは、フォアハンドをアウトサイドインで巻き込むように打つそうです。私にはその理由は(まったく)分かりません。

ただ、私が若いころは、スイングはインサイドアウトだと教わりました。メシールのテニスは「昔のテニス」ですので、もちろん、スイングはインサイドアウトとなります。

その理由はなんでしょうか。とても簡単な理由です。

図を見てください。スイングの軌道では、インパクトまで(つまりフォワードスイングで)はスイングのベクトルは必ず外側(右側)を向きます。(インパクト後は内側(左側)になります。)

スイングの軌道は、したがって、インサイドアウトになるわけです。これはごく自然なことです。むしろ、インサイドアウトにスイングせずにボールをヒットする方が難しいはずです。

また、テイクバックで左肩を入れるのが有効であるのも、これが理由の一つです。左肩を入れることで、体が開かず、スイングがインサイドアウトになりやすくなります。

さらに付け加えると、インサイドアウトでスイングする(つまりインパクト前)には、体重移動も同じ方向に向けます。つまり、フォワードスイングでは、体重移動もインサイドアウトとなります。

スイングと体重移動が一致するという事は、フォワードスイングにおいてスイングがスムーズになります。無理ない自然なスイングができます。これが、メシールのフォアハンドが美しい理由の一つなのです。

なお、フォワードスイングは、ボールを打つ方向に振りだすのが基本です。インサイドアウトが維持することも、その後アウトサイドインにターンすることもあります。前者が逆クロス、後者が順クロスの場合になります。


Mecir's Tennis (182) インサイドアウトのコツ

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Mecir's Tennis (181)でインサイドアウトの理由を書きましたが、フォアハンドのスイングをインサイドアウトに行うコツがいくつかあります。

一つ目は、フォワードスイングをインサイドアウトにするためにテイクバックを同じラケットの軌道にする必要は必ずしもないという事です。

たしかに、ラケットを引いたとおりに振れば、スイングは安定します。フォワードスイングでインサイドアウトになるラケット軌道と同じ軌道でテイクバックすることは有効です。

しかし、相手の打つボールは様々で、また、自分がボールを打つ場所も様々です。この形でラケットを引くことができないこともあります。そのような場合に無理をすると、逆にスイングが不安定(体の使い方に無理が出る)ことになります。

したがって、テイクバックはもっと自由に行っても構いません。ややアウトサイドインにテイクバックをしても、フォワードスイングでしっかりとインサイドアウトに振ればよいのです。

もう一つのコツは、右ひざ(から足首まで)とラケットの連動です。フォワードスイングでは、インサイドアウトしながら、かつ、ラケットが下から上に上がります。同時に、骨盤とひざの回転と上体(肩⇒ラケット)の動きが同期します。

これを実現する簡単な方法が、ラケットを右ひざの前(横)におき、膝の回転とラケットの回転を同期させて行うことです。それにより、ラケットは自然に下から上に動き、かつ、下半身の動きにラケットが引っ張られます。繰り返しますが、ラケットが右ひざの横からインサイドアウトでアップワードに出ていくイメージです。それを誘導するのが右ひざ(右足)という事になります。

全米オープン2013 哀愁のフェデラー

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全米オープンは、毎年8月の終わりから始まり、9月の頭までの間にニューヨークで開催される。まだ暑い日が続くが、それでも少し秋の気配が感じられるようになる季節だ。これから暑くなるという全仏オープン、全英オープンと比較して、少しさみしい、哀愁を感じはじめる季節に開催されるのが全米オープンだ。

グランドスラムの中でも最もにぎやかで喧騒の会場で開催される大会とこの季節感のコントラストが私にはいつも奇妙に感じられ、それが印象的な大会だ。

今年の3つのグランドスラムで決勝にさえも進むことができなかったフェデラーは、全米オープンでも同じく決勝の文字が付かない4回戦で敗退しそうだ。ランキングが高いとは言えないスペインのロブレロを相手に2セットダウンとなり、ロブレロがよほどミスを繰り返さない限りもはや挽回は望めそうにない。

これまでのロブレロに対してフェデラーは10勝0敗だそうだ。それはそうだ。ロブれどのように正攻法ではあるがプレーに工夫のないプレーヤーに対して、イマジネーション豊かなフェデラーのプレーが負けるはずがないからだ。いや、なかったからだ。

この季節と相まって、「哀愁のフェデラー」という言葉が、このゲームのフェデラーのプレーにはぴったりくる。ガッツを前面に出すタイプではないので、なおのこと哀愁が漂うのかもしれない。

工夫のないロブレロのプレーに対して、持てる技術をすべて出して戦うフェデラーだが、大切なポイントが取れない。ロブレロのプレーは確かに確実で安定しているが、意外性や戦略性に富んでいるわけではない。ただ、フェデラーの組み立てが功を奏さない。意外性のあるプレーは、それなりのリスクを伴うわけだが、今のフェデラーはそのリスクに負けてしまう。

恐らく、全盛期であれば面白いように決まった攻撃パターンが功を奏さない。しかしフェデラーは、それでもロブレロと正面切っての打ち合いを続けたりはしない。バリエーションを使って試合を自分のペースに持ち込もうとする。それがフェデラーのテニスだからだ。

そのテニスが、今、はっきりと通用しなくなっている。フェデラーは、それでも、自分のテニスをやめたりはしないだろう。ただ打ち合うだけのテニスで勝ち残ることを、フェデラーは選ばないだろう。

秋風の季節が終わり、長袖のシーズンになること、フェデラーはどんな結論を出すのだろうか。

今、この瞬間にフェデラーの2013年全米オープンが終わった。

Mecir's Tennis (183) オープンスタンスのポイント:左ひざを折り込む

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メシールは、プロテニスプレーヤーの中で初めてオープンスタンスを主体としてフォアハンドを打った選手だと言われています。より正確に言うと、ほとんどのボールをフォアハンドで打った初めての選手がメシールです。実際、メシールのビデオを観ていると、短いボールなどを除いては、ほとんどのフォアハンドショットをオープンスタンスかセミオープンスタンスで打っています。

今は一般的なこの打法ですが、メシールが活躍した1980年代は、フォアハンドは左足(右利きの場合)踏み込んで打つというのが基本であり、常識でした。メシールの同時代にもっとも強力なフォアハンドヒッターであったイワン・レンドルなどがその典型でしょう。レンドルはオープンスタンスでボールを打つこともありましたが、パンチ力のあるボールを打つ時にはしっかりと左足を踏み込んでいました。

オープンスタンスでフォアハンドを打つ場合に気を付けることはなんでしょうか。いくつか重要なポイントがありますが、そのうちの一つが左足です。

写真は、メシールのフォアハンドのテイクバックです。オープンスタンスです。左足に注目してください。この時、左足は、①膝が折れて沈み込んでいる、②膝が前ではなく横方向(2時~3時方向)を向いている(そのために左のくるぶしがネット方向を向いている)ことが分かります。それに合わせて、③右足も折れている状態となります。③は、左足が折れていますので右足が伸びていると、両肩が地面に水平にならないという点で必要です。

写真を見ると、両足のつま先がネット方向ではなく、横方向(2時~3時方向)を向いていることが分かります。つまり、体全体が横方向を向いているわけです。

この、左足の膝を内側に折り込む(絞り込む)状態を作ることが、オープンスタンスのフォアハンドでは重要です。脳内イメージとしては、膝の外側をネット(相手方向)に向ける感覚がよいかもしれません。

この姿勢を作ることで、自然に体の全体が横を向き、左肩が前(ネット方向)に出て、左手が前(体の前)に伸びる上体が出来上がります。骨盤が時計方向に回転し、その後のフォワードスイングの準備が出来上がります。体が横を向いているので、体が開きにくい上体です。しかも、そのまま、インサイドアウトでラケットを振ることができます。(⇐インサイドアウトのコツ





このフォームは、左足を踏み出して打つ場合(スクエアスタンス)には不要です。あくまで、オープンスタンスで打つ場合のポイントとなります。

Mecir's Tennis (184) テイクバックで左手を前に伸ばさない理由

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フェレールのフォアハンドは、まっすぐ伸びた左手が特徴的です。

一方、メシールはテイクバックで、左手を前に出します(重要!)が、左ひじを突き出すというのが正しいイメージかもしれません。
 
 
この一番の違いは、肩甲骨を使うかどうかです。(やってみたらわかりますが)両肘がテイクバックでまがっている方が、肩甲骨を使いやすいのです。

肩甲骨を使うというのは、つまり、両肩を(えもんかけのように)一緒に使うということです。これにより、右手だけがスイングをする、いわゆる「手打ち」になりません。

プロ野球をご存知でしたら、広島東洋カープの前田投手のマエケン体操を思い出してください。マエケン体操は、腕を伸ばしてはできません。えもんかけのように両肩を使うメシールの打法では、フェレールの様な左手の使い方は考えられないのです。



Mecir's Tennis (185) 練習ではうまく打てるのに試合になるとダメな人へ(1) ポジショニング

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練習ではうまく打てるのに試合になるとダメな人は、比較的多いと思います。「練習では試合のように打ち、試合では練習のように打つ」とよく言われます。試合では緊張したり、ミスをしないことを優先するあまり、腕がビビる状態になるのでしょう。メンタルがその理由だということです。

確かに、それは、誰しもが経験することです。が、理由はそれだけでしょうか?

たとえば、特別な大会ではない気楽な、しかもできれば自分が普段、比較的勝率の良い(いわゆる格下の)相手と練習試合をしてみてください。その時には、緊張せずに練習と同じプレーができたとしましょう。その場合には、試合ではよいプレーができないのはメンタルが理由である可能性が高いと思います。

が、もし、そんな気楽なゲームであってもよいプレーができなかったら?そういうことは、実際にはあります。それは、もはやメンタルが理由ではなく、技術的な問題です。練習と試合で自分の何が違うのか、よく考えてみる必要があります。

たとえば、写真はメシールの試合のある場面です。メシールは、ベースラインから1mか1.5mぐらい下がったところで構えています。これは、特に変わったことではなく、多くのプレーヤーはこのあたりでボールを待つでしょう。ぷろだけではなく、ほとんどのアマチュアプレーヤーもおそらくこのあたりにポジショニングするでしょう。でも、試合ではどうでしょうか。実は、ベースライン近く(たとえばベースラインの上)にポジションしていませんか?


グランドストロークの練習では、相手がドロップショットを打つことはほとんどありません。したがって、安心してベースラインの後ろに下がってポジションをとります。ベースラインから下がってポジショニングすることには、多くの利点があります。①相手の打ったボールを長い間待てる(時間の余裕ができる)、②(薄めのグリップのプレーヤーが一般には不得意な)高い打点のボールを打たずに済む、③足元の難しいボールを避けることができ、下がりながらボールを打つ必要も少なくなる、などです。自分が打つ場所がネットから離れますので、その分、一球で仕留めるようなボールは打てません。が、ベースライン後ろからいきなりエース級のボールを打つことは、いずれにしてもめったにないことです。

しかし、試合となると、常にドロップショットのことを頭に置かねばなりません。一球でもドロップショットを決められたり、またはドロップショット攻撃を受けたりすると、ついそれが頭にあり、ポジショニングが前になります。ベースライン上や、場合によってはベースラインの中にポジションしてしまったりすることがあります。

そうすると、上の①~③の正反対の状況になりますので、逆にプレーヤーは不利になります。そして、ボールコントロールが難しくなり、だんだんと「自滅」していくわけです。

こんなことが理由で、「練習ではうまくいくけれども試合になるとダメ」というケースもあります。そういう人は、他にもメンタルではなく技術的な点で練習と試合で何か違いがないか、考えてみることには価値があると思います。

【追記】
ただし、ベースライン後ろにポジショニングができないケースがあります。それは、サービスを打った直後です。メシールも、サービス直後はベースラインの中(または上)あたりにポジションを取ります。サーブの勢いでコートの中に体が入りますので、これを避けることはできません。ただし、これは、もともとサービスで相手を押し込んでいると考えると、確率的には(普段のストロークよりも)浅いボールが来る可能性が高いので、大きな問題にはならない(むしろ、攻撃できるのでちょうど良い)と言えます。もちろん、逆に深いリターンが返ってくることがありますので、その場合にはすぐに下がって、そのボールをしのがなくてはなりません。

Mecir's Tennis (186) 練習ではうまく打てるのに試合になるとダメな人へ(2) フットワークとニーワークだけでこんなにうまくいく

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練習ではうまく打てるのに試合になるとダメな人へ(1)では、ポジショニングが練習と試合で違ってしまっている場合について書きました。

今回は、フットワークとニーワークについて書きます。

試合でも練習でもよいのですが、横から見ていて「癖のある変な打ち方だなぁ」と見える人がいます。この人とならゲームをしたら勝てそうだ(自分のほうが技術的に上回っている?!)と、試合前は思います。しかし、試合になったら勝てない。打つ様子は格好良くなくても、ミスをしない。いいボールがコートに返ってくる。

それはなぜでしょうか?

その理由の一つが、フットワークです。フットワークといっても、ステップワークという意味ではありません。ボールの位置までの足の動きではなく、いざボールを打つ段になってテイクバックをする時点(つまり足の位置が決まってしまった後)でボールに対する足の置き方がよいということです。

ボールが飛んできたときに、よい位置に足を置くことができる人は、スイングフォームに癖があっても安定したボールを打つことができます。普段、ボールを打つ機会が十分にあるプレーヤーであれば(つまり初心者でない限りは)、テイクバックまでに良い位置に足を置いていれば、そのままスイングすればほぼすべてのボールはきちんとネットを超えて相手のコートにボールは収まります。

例えば、足の位置をきちんと決めておいて、ちょうどボールが打ちやすい場所に球出しをしてもらってみてください。極端な言い方をすれば、どんな打ち方をしてもボールはきちんと相手コートに返ります。言い換えると、試合でこの場所に足を置くことができたら、安定したストロークを打つことができるということになります。

どの場所が一番良いかは、その人のスイングフォームに依ります。したがって、言い換えると、自分のスイングに合った一番良い足の位置を見つけることが、試合で安定したストロークが打てるキモになるわけです。

ただし、ニーワークができていない場合は、話は別です。上のようにちょうど良い場所にボールを出してもらった場合、膝を柔らかく使えないと、ボールが相手コートに収まらないことがあります。足の位置はよいのだけれども、スイングを足が妨げてしまうのです。例えば、膝を突っ張ったままボールを打つ場合などがそれです。

メシールは、当時のプロテニスプレーヤーの中でも特にニーワークがよかった選手でした。190㎝の長身にもかかわらず、良い足の位置で、柔らかい膝の動きでボールをヒットしました。いわゆる「腰が低い」打ち方です。

だから、メシールのストロークは「上体が立っている」と言われていました。異なる高さのボールに対しても、膝を曲げることで上体とボールの位置関係がいつも一定だったのです。

試合になると、ミスが最もいけないことです。ミスをしないため、安全に打とうとしてつい背中が曲がってしまうことはないでしょうか。絶対に背中を丸めてはいけません。背中を伸ばし、背筋を伸ばして、両肩を地面と平行にしてボールに対応します。その分、足の位置とひざの柔らかい使い方には、最新の注意を払います。

これが、試合で安定したボールを打つために必要なことです。

Mecir's Tennis (187)  攻撃型と守備型についての考察

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テニスで攻撃的、守備的という区分けは比較的簡単です。サーブアンドボレーヤーは攻撃的、ベースライナーは守備的。メシールの時代で言えば、マッケンロー、エドバーグ、ベッカーなどは攻撃的、メシール、ヴィランデル、レンドルは守備的と言ってよいでしょう。

最近のプロテニスでは、サーブアンドボレーヤーをほとんど見かけなくなったので、上の意味での攻撃的プレーヤーは少なくなりました。かといって、ベースライナーは守備的という印象でもありません。ベースラインから攻撃するというイメージでしょうか。

ここでは、ベースライナーとボレーヤーの比較を別の視点でしてみたいと思います。

例えば、誰もいないコートでベースラインの1~2mぐらい後ろに立って、ネット方向を見てみてください。そして、ネットの向こうからボールが飛んできて自分がそれを打ち返すことを、頭の中でイメージしてみてください。

さて、今度はサービスラインから1~2mぐらい後ろに立って、同じことをイメージしてみてください。この場合は、自分のコートでボールがバウンドするのではなく、ボレーをするイメージになると思います。

この二つの違いは、ワンバウンドでボールを打つかノーバウンドでボールを打つかの違いですが、それだけではありません。もう少し別の、意識の違いがあると思います。

その二つの違いは、いわば舞台監督と演者(役者)の違いです。舞台監督は、舞台の外から演者を見ます。自分は舞台に立ちません。そして、常に舞台全体を見渡します。

一方、演者は自分が舞台に立ちます。演者に必要なのは、舞台の上での自分の立ち位置です。自分がどこに立ち、どのように振る舞っているかを意識することになります。

相手コートを見ながら、サービスラインから少しずつ下がってみてください。ベースラインから2mぐらい下がったところで、プレーヤーは演者から舞台監督の視点でコートを見る瞬間があると思います。自分の体のことを意識せずに済む瞬間です。

コートの中に体がある間は、プレーヤーは3次元空間の中でボールと自分の位置関係を常に意識し、それを測ります。コートの外に出た途端に、プレーヤーの意識はコート(舞台)でバウンドしたボールをどの場所で打つかに切り替わります。意識は3次元的ではなくどちらかというと2次元的になります。(実際にボールを打つ瞬間にはボールの高さを意識しますが。)

この2つの違いは、私には攻撃的と守備的というよりは、攻撃的と戦略的という言葉に近いように思います。自分の体を意識してボールをヒットする攻撃型プレーヤーと、ボールがコートの中でバウンドする場所を想定してどの場所でどこにボールを打ち返すかを考える戦略型。

この意識の違いは、別項でもう少し考えてみようと思います。

Mecir's Tennis (188)  フォアハンドのインパクトからフォロースルーにかけての左手の位置について

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フォアハンドのインパクトからフォロースルーにかけての左手の位置について、メシールと比較的グリップが近いフェデラーと比較してみたいと思います。

まず、フェデラーです。連続写真では、3枚目から4枚目のインパクトからフォロースルーにかけての左手の位置を見てください。これらを2枚目のフォワードスイングと比較すると分かりますが、フェデラーのフォアハンドでは、左手が先行して動き、その後で右肩が回転してくることが分かります。





フェデラーの3枚目とメシールのインパクトの時の左手の位置を比較してみてください。メシールは、インパクトで左手が胸の前にあることが分かります。これは、メシールのフォアハンドは、フェデラーのように左手が主導して体を回転しているのではないことを示唆しています。






下の2枚の連続写真を見ても、左手主導で体のターンをしているわけではないことが分かります。メシールのフォアハンドは、右腕を遅らせてその分ラケットを使ってスピンボールを打つのではなく、左手を胸の前で残すことでインパクト後に右腕を伸ばしていきボールを運ぶようなうち方であることが分かります。メシールは、あくまで腰の回転で体をターンします。左手はその間ずっと左胸の前にあります。テイクバックで左胸の前に置いた左手は、インパクトからフォロースルーまでずっと左胸の前にあります。これがメシールのフォアハンドです。




フォロースルーでも、最後まで左腕が左の胸の前にあることが分かります。これにより、スピンが効いた威力のあるボールは打ちにくいですが、狙ったところに安定したボールを打ちこむことができるのです。






Mecir's Tennis (189) 教科書には載っていないスピンサーブを打つコツ

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スピンサーブがうまく打てずに悩んでいる人が比較的多いと思います。今回は、2回に分けて、スピンサーブを打つコツ(TIPS)を紹介したいと思います。一つは教科書に載っていないコツ、もう一つは教科書に載っているのに分かったようで実は分かっていないコツです。

「スピンサーブの打ち方」というハウツーが世の中にはあふれていますが、どれを試してもうまくいかない人が多いのではないでしょうか。時々、スイングだけはマニュアル通りで逆にぎこちないというか、表現は悪いですが頭でっかちな打ち方になっているプレーヤーも見かけます。

ここでは、スピンサーブを打つために必要なコツの一つを書きたいと思います。それは、腕の力を完全に抜いて、背中に力を入れて打つことです。背中には、力をいくら入れても構いません。腕には力を入れてはいけません。

ラケットスイングは、教科書にあるように下から上に振り上げます。(後ろから前に打ってはいけません。)

この方法は、実は、ラケットスイングをボールを打つ瞬間に速くするコツです。スピンサーブを打つという事は、インパクトの前後のラケットの動きなどとは別に、ボールを打つ時に素早くラケットを振るという事が求められます。ボールに回転をかけるのですから、ボールがラケット面にヒットする間にラケットが素早く振りぬけなくてはならないのです。

腕に力を入れると、どうしてもラケット面方向にラケットを振ってしまいます。それは、スピンサーブにとっては逆効果になります。腕に極力力を入れず、背中(背筋)でラケットを振ることで、ラケットスイングをボールと垂直方向にしやすくなるのです。


Mecir's Tennis (190) 教科書に載っているが分かりにくいスピンサーブを打つコツ

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Mecir's Tennis (188) スピンサーブを打つコツ(1)では、腕を脱力して背筋だけでサーブを打つ方法を紹介しました。今回は、もう一つのTIPSについて書きたいと思います。

スピンサーブを安定して打つために大切なポイントとして挙げられるのが、左腕と両肩を一直線にすることです。これは確かに大切で、安定したサーブを打つためには左腕と両肩が一緒に動く必要があります。

教科書によく書かれているこの点ですが、トスアップ後に、つまりトロフィーポーズで、左腕と両肩を一直線にするのは、意外に簡単ではありません。

それはどうしてでしょうか?


 


トスアップでは、左腕は体の前からスタートします。つまり、大げさに書くと、腕の方向と両肩の方向は平行ではなく、どちらかというと垂直に近いわけです。上の連続写真の1枚目を見てください。

この点が教科書では分かりくい点です。教科書ではまるで、左手が両肩と体が作る面の中で動くように書いてあることがあります。実際には、左手のトスアップの動きはむしろこの体の面に垂直に近いのです。

つまり、両肩と左腕が一直線になるのは、左腕が両肩を結ぶ体の面(線ではなく面)の中に来る時です。左肩を蝶番(ちょうつがい)として左腕をだんだん上げていき、その腕が体を含む面になるまで上げて、初めて左手と両肩が直線状になります。

これは、正確に言うと「真上から見たら直線になる」ということであり、両肩と左腕には多少の角度はあるかもしれません。が、真上から見たらまっすぐになっていることが大切です。

上の連続写真を見てください。最後に、メシールの両肩と左手が直線状になっていることが分かります。

Mecir's Tennis (191) メシールがビッグキャットと呼ばれた理由

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現役時代に「あまり動いていないように見える」と言われていたメシールですが、一方でビッグキャットというあだ名をもらっていました。一見矛盾するこの2つの事柄は、ある一つのことを示しています。

それは、メシールは(ちょうどレンドルのように)「どたどた」「どたばた」とは走らず、むしろ「すっ」と、別の擬音語を使うと「するする」と動いていたという事です。

メシールのビデオをみて、メシールの『最初の動き』をよく分析してみました。相手がボールを打った時に、どのようにメシールの体が反応しているか。今と違い、クオリティーの低いビデオの時代のプレーですので、正確な分析はできません。

が、よくよく見てみると、メシールのプレーでは、相手がボールを打つとまず足が動き始め、ボールがバウンドしてインパクトを迎えるまで、少しでも良い体勢で打つように足を動かし続けています。一方で上体は最小限の動きしかしておらず、かなりコンパクトなスイングです。(メシールのプレーをご存知の方であれば、このコンパクトさはよく分かると思います。)

最初の一歩目が極めて早いという事はありません。「アンティシペーション(anticipation:予測)がすばらしい」と評されていたメシールですが、相手が打つボールを予測して動いているようには見えません。

ただ、相手のボールがネットを超える前から、最初の一歩目を動かしています。速い時には、ボールがネットを超えるまでに2,3歩も動くことがあります。

動かす足にルールはなさそうです。右足から動くことも、左足から動くこともあります。

メシールのフットワークのルールを、ビデオを観る中でまとめると、次のようになりそうです。

  1. 相手ボールがネットを超える前には足が動き始める。最初に動く足にルールはない。
  2. (ランニングショットを除くと)ボールがバウンドするまでに足の位置(特に軸足の位置)を決める。
  3. 上体はシンプルに使う。ボールの変かは、基本的には下半身の動きでコントロールする。
とくに、2がメシールがビッグキャットと呼ばれている理由ではないかと思います。ボールがバウンドした時点で軸足ができており、メシールはそこ(=ボールがバウンドしたタイミング)からフォワードスイングに入ります。それは、まるで、ボールをフトコロに呼び込んで、自由自在にボールを打ち分けているように見えます。

相手がボールを打ったら(ボールがネットを超えるまでに)素早く動き始め、ボールがバウンドするときには軸足を決めている。これが、メシールのフットワークのポイントのようです。

Mecir's Tennis (192) スピンサーブのコツ:右足を後ろに蹴り上げよう

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連続写真は、メシールではなくアンディー・ロディックのサーブです。メシールとは全く違うタイプのプレーヤー(ビッグサーバ)ですが、最後から2コマ目の右足を見てください。後ろに跳ね上がっています。

これは、ほとんどのサーバで同じようになるのですが、体が回転するのを止めるために意識的または無意識に行っていることです。どうしても体が回転してしまってスピンサーブを打てないプレーヤーは、意図的に右足を蹴り上げることで、体の回転を止めることができるかもしれません。



Mecir's Tennis (193) 思い切って完全に横を向いてしまおう!(”インサイドアウトのコツ”続編)

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Mecir's Tennis (181) なぜインサイドアウトなのかにおいて、インサイドアウトのスイングの意味について書きました。フォアハンドにおいて、インサイドアウトを実現する簡単な方法があります。

それは、「顔以外は全て3時方向を向いてしまう」ということです。


メシールのテイクバックの写真を見てみてください。顔は正面を向いていますので気が付きにくいのですが、この写真で指でメシールの顔を隠してみてください。隠すのは顔の部分だけです。

気が付きましたか?顔以外は、すべて横を向いているのです!時計で言うと(ネット方向を0時として)足も腕も体も、すべてが3時方向を向いています。大切なのは体です。「おへそ」が3時方向を向いていることが大切です。

これは、コート上での脳内イメージとも一致します。ボールが飛んできたら、顔はボールを見る(ほぼ正面を向く)のですが、体は完全に横を向いてしまいます。

当然ですが、ボールは体の(つまり3時方向に)離れたところに置きます。体の真正面(0時方向)においてはいけません。言い換えると、体とボールはかなり離れている感覚になります。

慣れるまでは、完全に横を向いてしまうのは難しいかもしれません。が、いったん慣れてしまうと、なんという楽な打ち方だろうと思うようになります。

広島東洋カープ・前田智徳の引退

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プロ野球・広島東洋カープの前田智徳が引退会見を開いた。いよいよ、来る時が来たのかと思った。

プロ野球とプロテニス、日本と世界、全く違う土俵で、違う時代に戦っていて、おそらく互いのことは知らないであろう前田とメシール。しかし、その美しいプレースタイルと、選手生活の最後を怪我との戦いで終えたという点で、この二人に共通の何かを見てしまうのは私だけだろうか。

私は、野球の打撃理論は分からないが、前田のバッティングフォームが美しいことはよく分かる。ここがこうだからというのではなく、ただ美しい。それは、メシールのテニスと同じだ。本当に美しいものは、誰にだってそれがわかるのだ。美しさを感じだけならば、専門家である必要はない。

もし私がテニスではなく野球をしていたら、きっとメシールの代わりに前田のバッティングフォームを分析したことだろう。前田のバッティングフォームは、そう思わせるものだった。誰か、これまでに分析した者はいるのだろうか。私がなぜこうまで美しいと感じるのか、誰か教えてほしい。

実は、私は前田の記者会見やインタビューには、引退記者会見を含めても、ことばの含蓄というものを感じない。落合博満やイチローの様に、ことばが示唆に富んでるわけではない。前田を求道者と呼ぶことがあるが、プロに徹しているだけのように思う。むしろ、ことばが豊かではないために、モノ言わず努力する求道者に見えるだけなのではないか。

前田のことばには、ただ、怪我との戦いの苦悩と焦りと、自分に対するいらだちとあきらめがあるだけだ。それは、どちらかというと、求道者というよりは、治癒が期待できない闘病者の言葉に近い。前田のことばから感じるのは、含蓄ではなく、焦りだけだ。

よく知られている「前田智徳はもう死にました」ということばは、究極の一人称目線だ。自分を、野球を客観的な目で見ることができる落合とは全く違う。前田は優秀なマネージャー(たとえば監督)になることはないだろう。前田は、一人のプレーヤーでしかない。

だからこそ、そのプレーの美しさは際立つ。生き方や考え方から、その話す言葉からは感銘を受けないという事は、純粋にそのプレーがすばらしいという事だ。皮肉にも、豊かとはいえない前田の言葉や態度が、前田のプレーの真の美しさを証明している。

あの美しい打撃フォームを見れなくなるのは寂しい。怪我は別とすれば、年齢的なものを全く感じることがなかったのが前田の打撃フォームだった。私には、この20年間で前田の打撃能力が全く変わっていないように見えた。実際、打席数は少ないというものの、前田は40歳を超えても3割を打っている。年齢は関係ないと言いながらも、明らかにこの数年間で打率を落としている30代後半のイチローとは違うのだ。(戦う土俵が違うので二人を比較はできないのは当然だが、両者を自分たちの若いころと比較することはできる。)

年齢を理由に引退する前田のイメージは、私には持てなかった。引退直前のメシールもそうだった。そのプレーを見る限り、年々技術を極めつつあった。40歳になってもプレーできるのではないかと、メシールのプレーを見ていて思った。50歳になってもバッターボックスに立つ前田のイメージも、同じように私は持っていた。

そこにはおそらく、センスや感覚と言った抽象的で感覚的なものではない、確かな技術があるからなのだろう。ゆるぎない技術があれば、年齢はあまり重要ではない。

であれば、誰かがその打撃技術を分析し、誰かがその技術を引き継ぐべきだ。野球選手であれば、野球に精通する者であれば、それができるはずだ。私がメシールのプレーを、その技術を後世に残したいと心から思っているように。

Mecir's Tennis (194) 結局スイングは膝主導・膝が使えないとネットが増える

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グランドストロークは腕で打ってはいけないと言います。背筋を使うのが効果的だと言います。肩をえもんかけのようにして回転すると言います。スイングを主導するのは腰の回転だと言います。

しかし、一番の主導、そして主動となるのは膝です。膝がスイングを支配します。ニーワークです。

面白いことですが、テニスでグランドストロークの技術は、末端の技術ほど上級者とそうでない人で差が際立ちます。末端というのは、つまりスイングの中で一番最後に来るものということです。

スイングでは、最後に手がラケットを振ります。その前が腕です。そして肩の回転です。その前に来るのが腰です。膝は一番最初です。

グリップや腕の振りは個性が出ます。また、技術も明確に出ます。肩の回転や腰の回転は、腕の振りほどではないですが、タイミングなどは技術が出ます。

それらと比べると、膝は地味です。違いも分かりにくい部分があります。

が、膝は最も重要です。腕の振り方、肩のまわし方、腰の回転などの「目に見える技術(スイング)」が見に着いたら、つまりそれらを意識せずにも正しいスイングができるようになったら、プレー中の意識をすべて膝に置きましょう。

ステップワーク、ボールの高低への対応、スイングのタイミング、これらはすべて膝によって主導します。

膝が使えなくなったら、結果にすぐに表れます。ボールがネットし出します。私事ですが、先日、ある大会で敗退した後、知り合いに「前半はネットが多かったね」と指摘されました。私は、なるほどと思いました。自分ではネットが多いと意識していなかったのですが、確かに膝が使えていないなとゲームの後半で気付いたからです。

私は、「テニスからテニスへ」というブログを愛読しています。技術的には素晴らしい解説が、そこでは展開されています。そして、膝が使えないとネットが増える、というそのままの記事を見つけました(記事はこちら)。

ガエル・モンフィス ~今、ナダルに勝てるプレーヤー~

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今(2013年)の現役のプロテニスプレーヤーで、ミロスラフ・メシールに一番近いと思うのは誰か?
今(2013年)の現役のプロテニスプレーヤーで、私が見ていて一番楽しいのは誰か?

私には、この二つの質問の答えは、同じです。

ガエル・モンフィス。フランスの黒人テニスプレーヤーです。

現在行われている上海での大会で、モンフィスはフェデラーに勝って4回戦に進みました。私は、モンフィスのプレーを見るのが好きです。怪我が多くて、なかなか上位ランカーになれないモンフィスですが、現在のトップ選手の誰にでも勝つ力を持っていると思います。

プレーが柔軟で、イマジネーションにあふれていること。
相手のボールの力を一度ラケットが吸い取って、力をのあるボールを打ち返す技術。
無駄な力が一切なく、体を効率的に使って打つことができる。

こんなところが、メシールとそっくりで、そして魅力的です。

無駄な力が少なく、生きたボールを打つことができるのは、ナダルと正反対です。150の力で150のボールを打つナダルと、80の力で120のボールを打つモンフィス。

いつかモンフィスは、ナダルに勝てるような気がします。ナダルのような力のテニスを、技のテニス(と言ってよいでしょう)のモンフィスが打ち破るところを、是非見てみたいです。

ナダルがこれでもかという力で打ち込むボールを、その力を吸収して、ナダルが嫌な場所に軽々と運ぶモンフィス。そんなシーンが目に浮かぶのです。そのテニスは、ジョコビッチにも、マレーにも、すべてのプレーヤーに対して有効な技術となるでしょう。

Mecir's Tennis (195) 左手主導ではない!

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ちょっとしたことですが、とても大事なことがあります。タイトルの「左手主導ではない!」は、右利きのフォアハンドについてのメッセージですが、そんな「ちょっとしたことだけれども大切なこと」の一つだと思います。

最近の多くのテニスプレーヤーのフォアハンドストロークは(右利きの場合は)左手主導型だと思います。つまり、フォワードスイングで左手がまず前に出て、それに引きずられて右手が出てきます。左手が体の回転とスイングを誘導するのです。

例えば、下のナダルのフォアハンドです。右腕(右利きであれば左腕)で体を回転させた後で体は正面を向いていますが、ラケットを持つ左腕(右利きであれば右腕)はまだインパクトすらしていません。おへそはネット方向(12時方向)を向いているが、ラケットを持つ手はまだインパクトをしていないのです。つまり、ラケットを持つ腕が体の回転(フォワードスイング)に対してかなり遅れて出ていることがわかります。


さて、メシールのフォアハンドはどうでしょうか。フラットドライブ系のメシールのスイングは、最近のスピン重視のスイングとはちょっと異なります。脳内イメージで言うと「左手主導型」ではなく、「左手と右手が一緒に動く」イメージです。

左手が主導しないので、スイングの意識は右手で振る(より正確には両手を同時に振る)イメージです。両手で同時に振るというのは、例えばハンマー投げのイメージかもしれません。

言い方を変えると、徳島の阿波踊りのように両手が平行にうごく脳内イメージです。(とはいえ、これはあくまで脳内イメージであって、実際のスイングでは両手が平行に動くことはありません。)



この脳内イメージを別の表現をするならば、右腕主導でスイングするが、左手も動かすという事になります。右手だけでラケットスイングをして、左手は死んでいる(たとえば垂れ下がっている、折れ曲がって体にくっついているなど)状態はNGです。

あくまで、右腕が動きながら左腕も同じ方向に動く(回転する)のです。もちろん、その際、両肩がそれと一緒に動きます。以前書いた、「えもんかけの理屈」です。

スピン系のボールは、インパクトよりも前にラケットスイングが加速します。加速する途中でラケットはボールをヒットします。この場合は、左手で先にスイングを開始し、ラケット速度を稼いでから、右手でインパクトという手順で打つことができます。

一方、イースタングリップなどの厚い当たりのフォアハンドは、インパクトよりも先にスイング加速が始めるイメージではありません。ラケットをボールに当ててからボールを強く押し出すイメージです。したがって、インパクト前にラケットスイングを加速してしまうと、インパクト後に大きなフォロースルーが取れないフォームになってしまいます。

これが、両腕が平行になる、左手主導にならない理由です。

この「阿波踊りスイング」のためには、テイクバックで左手が体の前に来なくてはなりません。つまり、フォアハンドテイクバックで左手をラケットに添えておくのです。そうすると、自然に左手は体の前に来ますので、その後フォワードスイングで両手を同時に回転させればよいのです。

実際にスイングをしてみればわかりますが、両腕を同時に使うとメシールの打ち方では力の使い方がとても効率的です。腰の回転と両腕の回転が同期しますので、力の制御がしやすいのです。薄いグリップのプレーヤーは試す価値があると思います。

メシールのフォアハンドはスイングが(驚くほど)ゆっくりだと言われていました。その理由も、左手と右手が腰や肩の回転と一緒に行われることによるものだと思います。



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