Quantcast
Channel: ミロスラフ・メシールのテニス Miloslav Mecir's Tennis
Viewing all 249 articles
Browse latest View live

Mecir's Tennis (196) テニスの難しさ(ピースが一つだけ足りないジグソーパズル)

$
0
0
テニスのスイングはゴルフのショットや野球の打撃などと比較して、フォームのセオリーが確立していないスポーツだと言われています。止まって打つことができるゴルフや野球のバッティングと違い、移動してから打つ(または移動しながら打つ)ことや、ボールを打つ範囲が広いこと、また飛んでくるボールを打つことなど、ボールとスイングの関係が複雑だからでしょう。

空間3次元と時間(つまりタイミング)の4次元でボールを打ち返す正確さがスイングに求められるのがテニスの特徴であり、また難しさです。

多くの教科書はあるものの、実はそれらもまだ試行錯誤の段階であり、絶対的な教科書がないのが世界のテニス界の現状です。実は、テニスの教科書はトップ選手を追いかけます。教科書がトップ選手を作るのではなく、トップ選手たちが教科書を作っているのです。正しいフォームを身に着けたらトップランカーになるのではなく、トップランカーが正しいフォームを決めているのです。そのために、テニスの技術には「流行」が発生します。つまり、その時その時で、時代とともに教科書の内容は変わり、いまだに何が正しい技術なのかを理解している人がいないのがテニスです。同じサイズのコートで、同じ規格のボールを使い、同じ規格のラケットを使っているにもかかわらず、です。(ラケットはずいぶん進化しましたが。)

このブログでは、現在の教科書を追いかけるのではなく、1980年代後半のメシールのテニスを分析してきました。そして、私自身がその技術を実証するために、コート上で試行錯誤してきました。

その経験の中で最も難しいと感じることの一つは、「ピースが一つでも足りないジグソーパズルは未完成である」ということです。部分部分は正しいフォームであっても、たった一つが足りないために、スイング全体としては0点になってしまうことがあります。

これは、特にテニスという複雑なスイングにおいては無視できないジレンマです。どこかで妥協して60点のスイングで納得するか、あくまで100点を目標にしてそれまでは0点でも我慢するか。

先日、あるテニスのインストラクターと話す機会がありました。そのインストラクターは、私に前者を勧めました。おそらく、ほとんどのインストラクターやコーチは、前者を勧めるでしょう。そして、60点を70点に、70点を80点に積み上げていけばよい、と言うでしょう。

が、私はそれを良しとしません。なぜならば、60点のフォームを70点にアップグレードすることはそんなに簡単ではないからです。多くの場合、60点のフォームを70点にするために、一度0点に戻すか30点に戻すか、これまでのフォームの多くの部分を解体しなくてはならないことがあります。

テニスのフォームは、積み上げ型ではありません。積み上げ型であれば、10点分を単に足し算すればよいのですが、そんな単純ではないのです。60点のフォームを完成させれば、多くの場合はそのまま60点のフォームでテニスをすることになります。70点に、80点に上げるためには、一度グレードダウンをする覚悟が必要です。その難しさを理解せずに、テニスの上級者は簡単に「上達」という言葉を使います。

テニスのフォームを理解する際に大切なのは、最初から「ピースが欠けたジグソーパズルは0点になる可能性がある」ことを知っておくことだと思います。「理屈では正しいはずなのに、ボールが思うように飛ばない」のであれば、ほかに修正個所があるということです。そこで、せっかく正しい部分を調整して、結果的に60点のフォームにならないように気を付けたいのです。

正しいフォームを一つ一つ積み上げること。そして、完成までは安易な妥協をしないこと。これがテニス技術習得において重要なことなのではないかと考えています。


Mecir's Tennis (197) 背中を伸ばして打つこと(自分を信じることの大切さ)

$
0
0
Mecir's Tennis (175) 背中を丸めないこと」において、ストロークにおいて、背中を丸めてはいけないという事を書いた。

プレーヤーはどういう時に背中を丸めてボールをヒットしてしまうのでしょうか?

それは、「十分な体勢でボールが打てないが、それでもボールを安全に打ちたい場合」です。言い換えると、「安全に相手のコートにボールを打ちかえす」場合に、プレーヤーは背中を丸くしてボールを打ってしまいます。

ボールを強く打つことは後回しで、まずは相手のコートに(狙った場所に)ボールを運びたいとき。そういう場合に、往々にしてプレーヤーの背中は丸くなります。

そして、これは、絶対にしてはならないことなのです。絶対に、背中を丸めてボールを打ってはいけません。

背中を丸めてボールをヒットすると、ボールを狙った場所に強く打つことはできません。どうしても、ボールを「置きに行く」打ち方になってしまうのです。

さて、では、どうすれば背中を丸めずにボールを打てるのでしょうか?

大切なことは、振り遅れないことです。構え遅れないことです。構えが遅れると、振り遅れます。背中を伸ばしてボールを打つ場合に、振り遅れてしまうとボールはまともにヒットできません。(逆に背中を丸めれば、多少の遅れには対応できます。)

振り遅れずに、準備を早めにして、ボールをしっかり打つ。これが大切です。

もう一つ、大切なことがあります。それは、精神的に受けに回らないという事です。常に攻撃します。常に次のボールを待ちます。ボールを打った瞬間に、それがネットしたりアウトしたりするのではという気持ちを、一切持ってはいけません。自分が打ったボールは絶対に相手のコートにバウンドすると信じます。それによって、相手のボールへの準備が早くなります。

準備が早くなると、振り遅れにくくなります。背中が丸まりにくくなります。よい方の循環が出来上がります。

初級であろうが、中級であろうが、上級であろうが、プロであろうが、レベルに関係なく共通していることなのです。「自分の打ったボールは必ず相手のコートに突き刺さる」と信じてボールを打つのです。

Mecir's Tennis (198) フォアハンドは阿波踊り(マニアには垂涎モノ?の連続写真)

$
0
0
今のテニス雑誌には、もちろん、ミロスラフ・メシールのことが掲載されることはありません。私は、何度かスロバキアに行きましたが、首都ブラチスラバの大きな書店に行ってスポーツ書籍や雑誌のコーナーで探しても、テニスに関する書籍でメシールの名前をみつけることはありませんでした。スロバキアでは、メシールは、今でも有名人だそうですが。


この写真は、1980年代終わりごろのTennis Journalの雑誌をスキャナで読み取ったものです(1989年6月号)。こんな連続写真も、もう、雑誌に掲載されることはないでしょう。

Mecir's Tennis (195) 左手主導ではない!」において、メシールのフォアハンドでは左手主導ではないことを書きました。それを説明できる連続写真を探していたのですが、古いテニス雑誌(別稿で紹介します)の画像をスキャンしました。

それが上の連続写真(の一部)です。下に、そのうちの2ショットを示します。どちらのコマにおいても、右手と左手が平行になっているのが分かると思います。最近のフォアハンドの写真と比べてみれば、その違いは一目瞭然です。


下の写真ではスイングの間、ほとんどで両手が平行になっています。


最後のフレームなどは、明らかに「阿波踊り」のように両手が平行になっています。



特に、最後のフレームなどは、明らかに「阿波踊り」のように両手が平行になっています。また、Youtubeの連続写真の映像(アンドレ・ゴメスとの試合前の練習)でも「阿波踊り」がはっきりと確認できます。

メシールのフォアハンド(イースタングリップのフォアハンド)は、右手が主導するのでも、左手が主導するのでもありません。両手を平行にしたまま両腕でスイングするのです。

Mecir Tennis Forehand Tennis Classic Back Number Photo

Mecir's Tennis (199) Youtubeより

$
0
0
Youtubeに載っているメシールに関する動画像をいくつか紹介しておきます。

Miloslav Mecir動画像
多くのYoutube上のメシールの動画像を一つにまとめた。

添田豪対ミロスラフ・メシールJr.(2013年全米オープン予選)
メシールジュニア(息子)の方のゲームです。メシールの息子は、おなじMiloslav Mecirで、プロテニスプレーヤーです。残念ながら、お父さんの往年のプレースタイルとはかなり違うのですが。辛口のコメントが付いていました。In 1986, Miloslav Mecir beat Mats Wilander, Joakim Nystrom and Boris Becker on Louis Armstrong Stadium to reach the final of the US Open before falling to Ivan lendl. Now, 27 years later, his son plays on the same court where the father enjoyed such spectacular successes. But Mecir Jr. lacks the same amazing skills as his dad, and as you can see here, he makes so many unforced errors that it wouldn't matter even if he did.『1986年にUSオープンで、ミロスラフ・メシールはマッツ・ヴィランデル、ヨアキム・ニーストロム、ボリス・ベッカーに、ルイ・アームストロングスタジアムで勝利して、決勝戦に進んだ。決勝では、イワン・レンドルに対戦し敗れた。(訳注:この時、ミロスラフ・メシールはノーシードからの勝ち上がりだった。)そして、27年後に、メシールの息子が同じコートですばらしい勝利を挙げた。とはいえ、残念ながら、メシールの息子は父ほどのすばらしい技術を持ってはいない。そして、この映像でも多くのアンフォースド・エラーがみられる。』

ソウルオリンピック

Mecir's Tennis (200) 古いテニス雑誌のメシールの記事(200回記念!)

$
0
0

このブログではメシールのテニス技術を分析してきたのですが、気が付くと200回になりました。同じことを繰り返し書いていたり、以前書いたことを後で修正したりと、必ずしも整理された内容ではないですが、読んでいただいている方には本当に感謝いたします。

いつか、内容をきれいに整理しようともっています。また、実は英文にして海外の方にも読んでもらえるようにしようかと思っています。いつか、メシール本人にも読んでもらえるとうれしいですね。

さて、今回は、200回記念として、1980年代後半のテニス雑誌のメシールに関する記事を掲載しようと思います。このころの雑誌は、もう古本屋などにもないので、メシールファンには貴重な資料だと思います。

Tennis Journal(テニスジャーナル)などの日本の雑誌の記事が中心ですが、一部、海外の雑誌の記事も掲載します。フランス語の記事は私も読むことはできないので、どなたか通訳してくださるとうれしいのですが…。

Tennis Journal


French (Coup de Poing)

Tennis Journal

Mecir's Tennis (201) (かなり重要)右手の肘の角度が変わらないこと

$
0
0
このブログでは、メシールのテニス技術、特にフォアハンドを分析してきましたが、これまであまり議論してこなかった重要な技術があります。それは、右肘の使い方です。右肘の使い方はメシールのフォアハンドの最も重要な特徴です。そして、現代テニスではほとんど使われない技術でもあります。今回は、日本の錦織との比較で、フォアハンドの右肘について述べたいと思います。

まず、錦織とメシールのフォアハンドのテイクバックを比較してみてください。全く異なっていることが分かると思います。以前、メシールとフェデラーのテイクバックを比較して、ラケットヘッドの向きについて述べました。メシールのテイクバックでは、ラケットヘッドが下を向きます。(真下という意味ではありませんが、水平よりは下を向きます。)一方、フェデラーのテイクバックではラケットヘッドは上を向いていました。厚いグリップの錦織の場合は、それはもっと顕著です。ラケットヘッドは、テイクバックでほぼ真上を向きます。錦織だけではありません。現代テニスの厚いグリップのフォアハンドでは、ほとんどのプレーヤーのラケットヘッドは上を向きます。


これがどのような影響(効果)があるか。それは、フォワードスイングで分かります。メシールは、フォワードスイングで、肘の角度が殆ど変りません。これは、肘を挟んで腕を一体化させ、肩を支点にして腕を使っていることを示しています。写真を見てください。(分かりやすいように、腕の角度を線で示しました。)






そして、ラケットは下から上に振り上げられます。まるで、ボーリングのようです。繰り返しになりますが、肩を支点にして腕の角度を変えず、ラケットを下から上に振り上げています。そのためには、ラケットヘッドが下を向いていることが望ましいのです。

現代テニスは、テイクバックからフォワードスイングにかけて、ラケットの(ヘッドの)軌道がループを描きます。メシールのフォアハンドでは、ラケットヘッドが振り子のように下を向いて、テイクバックとフォワードスイングで同じ軌道を描きます。なんという、簡単で素直なスイングでしょうか。

Mecir's Tennis (202) 来年もメシールデビスカップ監督(スロバキア)

$
0
0
私はスロバキア語は読めないのですが、Googleの自動翻訳によると、メシールは2014年もスロバキアのデビスカップ監督を続けるようです。(ニュースソースはこちら。)

スロバキアがチェコから独立(分裂)して以来、メシールは監督なのですが、スロバキアの成績は必ずしも良くありません。メシールがスロバキアの英雄であることも理由でしょうが、他に候補者がいない人材の薄さを意味しているのかもしれません。

いずれにしても、いつか、メシールをデビスカップで(監督として)見ることができるかもしれません。楽しみです。

スロバキア語が読めないのですが、自動翻訳のおかげで、こんな記事もありました。スロバキアの男子ランキングです。たぶん、2012年の情報だと思います。

現在のランキングスロバキアSINGLISTOV

30 (26)マーティンKližan1190
81 (81)ルーカスLacko 627
162 (169)カロル·ベック328
173 (175)アンドレイ·マーティン282
230 (229)ポールČervenák206
327 (335)ヨゼフKovalik 128
348 (411)マレクSemjan 119
351 (354)ノルベルトのGombos 117
365 (366)ミロスラフメチージュミリリットル。111
397 (400)エイドリアンシコラ98
400 (379)イボケージ96
441 (346)カミルČapkovič83
ランキングエミレーツATPダブルスランキング(ダブルス)

1 (1)マイク·ブライアン(USA)と(1)ボブ·ブライアン(米国) - 11,520ポイント両方
3 (3)マルク·ロペス(スパ)6390
4 (4)マルセルグラ·プジョル(スパ)6300
5 (5)ダニエル·ネスター(CAN)5860
6 (7)ロバートLindstedt(スウェーデン)5630
7 (6)マックスミルニ(BLR)5390
8 (8)リーンダーパエス(インド)5245
9 (10)ホリアTecau(ROU)5220
10 (11)マヘッシュブパティ(インド)5165
現在のランキングスロバキアDEBLISTOV

第36回 (33)フィリップポラーシェク1940
47 (48)ミハルMertiňák1490
93 (94)イゴールZelenay 867
116 (110)マーティンKližan650
171 (194)カロル·ベック401
254 (243)アンドレイ·マーティン254
257 (266)カミルČapkovič250
326 (329)ルーカスLacko 190
402 (396)イボケージ146
416 (407)ポールČervenák140を

Mecir's Tennis (203) テイクバックではラケット面は下を向く

$
0
0
きちんと分析ができていないのですが、大切なことなので、書いておきます。

メシールの…というよりも、あらゆるというのが正しいのですが、フォアハンドでは、テイクバックでラケット面が下を向きます。スピン系のストロークでは常識というか、当然なのですが、実は、イースタングリップでも同じです。面の方向は真下というわけではなく、おおよそ45度程度です。ただし、グリップが薄いので、ラケット面はほぼ真下を向いている脳内イメージになります。

そして、ラケットヘッドは、6時よりも4時や5時方向を向いています。(ただし、打点が低い場合は、真後ろ(6時方向)になります。)

以前も書きましたが、薄めのグリップで厚い当たりを打つからと言って、ラケット面は常に地面に垂直になっているわけではないのです。かといって、スピナーのように面を伏せてスイングをして、インパクト時だけラケット面が垂直になっているわけでもありません。

実は、前者はマッケンロー、後者はエドバーグでした。そして、その二人のフォアハンドは、決して安定したショットではありませんでした。

ここが、イースタングリップの難しい点です。逆に言うと、美しいフォアハンドを打てるメシールの特長でもありました。


下の図にあるように、インパクトではそれほど強いスピンをかけるわけではないので、ラケット面は伏せられているわけではありません。


これがどのような関係になっているのか。これらは、実は、一連の流れの部分、部分となっています。つまり、理由があり、理にかなっているのです。それをうまく説明したいのですが、3次元的な動きなので、図にもしにくいため、簡単ではありません。

順序で書くと、次のようになります。

  • ラケットを伏せたままテイクバック。ただし、腕ではテイクバックしないので、あくまで腰の回転でテイクバック。テイクバックではラケットヘッドは下を向く。
  • テイクバックピークでは、ラケットヘッドは4時~6時方向を向く。打点が低いほど6時に近く、高いほど4時に近い。ラケットヘッドは水平またはやや上向きでもよい。(ボールによる。)
  • 左手は打点方向を指す。低いボールやアプローチショットは左手を前に伸ばすが、高いボールでは左手先は4時~5時方向となる。
  • フォワードスイングはインサイドアウトになる。ラケットは外から内側に入り、そこからインサイドアウトで外向きに出ていく。←この部分が一番分かりにくい。図にすると下の通り。

どうしてこんな複雑な軌跡になるのかについては、また、べつの機会に書きたいと思います。ここでは、メシールのフォアハンドはまっすぐ引いてそのまままっすぐ振りだすのではない(横方向にループになっている)という事だけを強調しておきたいと思います。


Mecir's Tennis (204) 体幹(体の軸)が大切

$
0
0
2013年のATPワールドツアー・ファイナルズの準決勝(ジョコビッチ対バブリンカ)をテレビで観戦しました。その年の最後を締める、チャンピオンを決める大会は、今はATPワールドツアー・ファイナルズっていうのですね。私(のようなオールドファン)には、やはり、マスターズという言葉の方がしっくりきます。

その年のベスト8が出場し、予選リーグの後、それぞれのリーグの1位と2位でトーナメントを行うことは、昔と変わっていません。

バブリンカはスイスの選手で、フェデラーとともにスイスを支えている男子選手です。フェデラーと同様に片手打ちのバックハンドで強いスピンボールを打つことができます。

特に私が見た試合では、バブリンカの調子がよく、ジョコビッチと互角に打ち合っていました。攻めと守りのメリハリもよく、とてもよいテニスをしてました。

が、それでも、ジョコビッチには勝てない。勝てる気がしないのです。ジョコビッチのテニスが盤石で、それを崩すためには結局はリスクの大きなショットを何本も打たなくてはならず、それをすると自滅してしまうのです。

バブリンカとジョコビッチ、何がそんなに違うのだろうか。

そう思いながら見ていたのですが、ポイントの一つは、「体の軸」だと思いました。最近でいうと、体幹というのが正しいかもしれません。


 
ショットによっても違うのですが全般に、ジョコビッチのストロークは軸がぶれません。基本的には、体幹の線(背中の筋)が地面に垂直を保たれています。一方で、バブリンカは時々軸がぶれます。この違いは、甘いボールではなく、厳しいボールの時に顕著に表れます。ジョコビッチは、深いボールや走らされて打つ場合でも、体幹を維持します。そのため、ボールがぶれないのです。一方、バブリンカは、厳しい体勢でボールを打つ時にどうしても軸がぶれます。その微妙なブレの結果がアウトボールになったり、ネットボールになったりするのです。
 
軸のブレがボールの安定感につながるのであれば、軸がブレるかどうかの小さな違いが実は勝ち負けを分けるほどの大きな違いであることが分かります。そして、もう一つ、厳しいボールに対しても体幹を維持することが実はとても難しく、体力が必要であることを忘れてはなりません。
 
そのためには、普段の練習から、体幹を維持すること、背中の筋を地面に垂直に維持することを心がけなくてはなりません。肉体的なトレーニングと同時に、そのことを意識してトレーニングすること(試合では意識しなくても体幹が維持されるようになるまで体に覚えこませること)が大切です。
 
確かに軸を維持して打つのは負担が大きく、つい軸がぶれたまま打ちたくなります。が、トップ選手は、そこを鍛錬して、軸がぶれない体勢を維持しながらボールを打ちます。これが、トップになるかどうかの一つの大きな差だと思います。

テニスグッズ紹介(1) Wilson Leather Bag (ラケット3本入り)

$
0
0
テニスグッズを紹介することがあまりないこのブログですが、米国出張で購入したバッグについて紹介します。まだ購入していない(まだ出張中なので… ^^); )のですが。

今回、Tennis Warehouse等でいくつかテニスバッグを購入しました。コンセプトは「仕事に持って行っても違和感がないバッグ!」です。仕事を終えた後、そのままテニスをしたいときが時々あるのですが、テニスバッグを持っていくといかにも「仕事を終えたら遊ぶ」感じがするので、都合が悪いことがあります。(本来は、仕事中にテニスをするのではないので、何も問題はないのですが。)

しかし、テニスラケットはそれなりの大きさなので、どうしても仕事で使うバッグには納まってくれません。

そこで、それとは見えないテニスバッグです。

一つ目は、Wilsonの革製バッグです。これは、正直、本革という事もあり、高かったです…。購入してみた印象としては、想像していたほどは重くないため仕事に持っていく際にバッグの重さが負担にならないと思います。テニスバッグに見えるかどうかですが、もともとテニスで使うと思っているので私にはどうしてもテニスバッグに見えてしまうのですが、革の高級感があるのでまさかテニスバッグとは思わないという方が多いかもしれません。むしろ、気になるのは革製でありまたサイズが大きい(ラケットが3本入るサイズ)であるために、何となく旅行バッグに見えることです。なんで仕事場(出張でもないのに)旅行鞄で…?と思われるかもしれませんね。逆に、仕事で出張の時にはちょうどよさそうです。(ただし、テニス関係と仕事関係や衣類を全部入れるほどの大きさではありませんが。)

最後に、紹介文を書いておいておかしな話ですが、この商品は2012年(現在は2013年です)の商品であり、すでに品切れ直前の状態であるようです。私が購入したAmazon.comでは「残り1つ」となっていました。この記事は、紹介のための紹介になってしまうかもしれません。

テニスグッズ紹介(2) Princeテニスバッグ

$
0
0
テニスグッズ紹介(1)に続いて、「仕事に持って行っても違和感がないテニスバッグ」の第2回です。今回はPrinceのテニスバッグを紹介します。Prince Classic Racquet Bagです。こちらは、前回のWilsonのテニスバッグとは違って、この記事を執筆している時点(2013年11月)で販売されているバッグです。

こちらも、あまりテニスバッグには見えません。写真で見ての通り、一般的なテニスバッグの様な非対称(ラケットヘッドが大きいため)ではなく左右対称であることが理由だと思います。とはいえ、ラケットバッグと名乗るわけですから、ラケットは収納できるのだと思います。(まだ、試していません。)

大きさはそれほど大きすぎるわけではなく、重さもそれほどではありませんでした。Wilsonの革製バッグ(テニスグッズ紹介(1)で紹介)と比べるとカジュアル感はありますが、スポーツバッグの様な雰囲気ではないのでよさそうです。

側面のPという大きな文字が、知っている人であればすぐにPrinceと分かってしまうのが玉にきずかもしれません。

テニスグッズ紹介(3) FILAメッシュバッグ

$
0
0
テニスグッズ紹介第3弾は、またまたテニスバッグです。今回は、「仕事に持っていけるバッグ」ではありません。

FILAのメッシュバッグ(Fila Fall Baseline Mesh Bag Black)です。大きさは、普通のトートバッグのサイズで、大きすぎも、小さすぎもしない印象です。

テニスコート(特に試合)で、探しているモノがないとカバンの中をごそごそすることが時々あるので、試しに購入してみました。確かにメッシュになっているので中はスケスケです。これで、ごそごそ探しはなくなりそうです。

この商品は(購入前から分かっていたのですが)女性向けです。写真に写っているロゴが写真の印象よりも自己主張が強く、しかもピンクとオレンジなのです。なんとなく、リゾート感があります。せめて、このロゴが赤と黒(FILAのもともとの色)だったらもう少し落ち着いているのですが、これでは女性向け商品だと一目で分かってしまいます。そこがちょっと残念。UNISEXでデザインしてくれたらよいのですけどね。

なお、この商品には、小さなポーチが付いてきました。こちらは、ピンクとオレンジなどの100%女性向けのものですので、私には使えそうにありません。いや、思い切って使ってみても面白いかもしれませんね。

テニスグッズ紹介(4) Leadテープ

$
0
0
第4回は、Leadテープです。ラケットに貼り付ける「おもり」です。

Tennis WarehouseのWebに掲載されているのですが、メーカー表示がないのでTW社せいかもしれません。幅は、0.25インチ(6.35mm)ですので、ラケットフレームの内側に貼りつけることができます。重さは、1インチ(2.54㎝)あたりで0.25gです。30㎝で約3gですので、ラケットの内側に上半分いっぱいに貼ると、両側に着けて6gと言ったところでしょうか。

長さは36ヤード(約33m)です。30㎝であれば100本程度取れることになります。金額は約25ドル(2500円程度)ですので、1mあたり75円程度です。日本で購入すると、キモニー社のもので30mで7500円程度ですので、3分の1の価格です。(どうして、こう、米国製は同じようなものでも金額が違うのでしょうね。)

なお、Leadテープは鉛製ですので、体への影響(ガン、妊娠、生殖機能への影響など)が心配されます。触った後は、手を洗うようにしましょう。

Mecir's Tennis (205) ラケットの重さをどこで感じるか

$
0
0
ラケットにはトップヘビーやトップライトなど、重さとは別にバランスがあり、最近のラケットではバランスはほとんど表記されています。私はあまり詳しくないのですが、ラケットヘッドが遅れて出てくるタイプのスイングはトップライトなほうがよく、フラット系のスイングはヘッドが重いほうがよいそうです。

私は、テニスの専門家ではないので詳しいことはわかりませんが、トップヘビーがよいか、トップライトがよいかは、体の回転とラケットの動きがどのぐらい一致しているかによるのではないかと考えています。ラケットが体の比較的近くを体と一緒に回転するタイプは、トップヘビーは向いていません。遠心力で体とラケットの回転にずれが生じやすいからです。

ミロスラフ・メシールが現役時代に使っていたラケットを、スロバキアの首都であるブラチスラバのテニス協会のレストランで見たことがあります(動画像はこちら)。ご覧いただければお分かりの通り、メシールのスノワート社製のラケットはガラスケースに入れて展示されており、残念ながら手に取ることはできませんでした。

したがって、私の想像なのですが、このラケットは重心が…というよりもスロートのところがかなり重くなっているのではないかと思います。つまり、このスロートの部分が重くっており、メシールがフォワードスイングをするときにはこの部分を意識してラケットを振っていたのではないかと思うのです。

メシールのスイングは、現代テニスの誰よりも、ラケットと体が一体になって動きます。インパクトの直前ぐらいまでは体の回転にラケットはついていくだけで、インパクトから初めて腕を使うイメージです。つまり、テイクバックからフォワードスイングにおいてはラケットの体に近い場所、すなわちスロート部分あたりを体の回転に合わせて振り出すイメージになります。ラケットがトップヘビーとなると、体とラケットの距離が離れ、そのために体の回転とラケットヘッドの回転に微妙なずれが出てしまうのです。スロート部分を走らせるイメージであれば、実質的には体の回転だけでラケットを振る(フォワードスイングする)ことができます。

ラケットヘッドに重心があるほうが遠心力でラケットを強く振ることができます。ただ、メシールの場合、ラケット全体が十分に重かったそうですので、その必要はないのかもしれません。

なお、メシールの現役時代のラケットのアップ写真は、メシールのテニス(112) どうしてもウッドラケット?(おまけ)をご覧ください。

25年を挟んだトランプのカード合わせ(マレー&レンドル、フェデラー&エドバーグ、ジョコビッチ&ベッカー、錦織&チャン…)

$
0
0
1980年後半のメシールが活躍した時代には、世界の男子プロテニスはタレントがそろっていました。マッケンローやレンドル、ベッカー、エドバーグ、ヴィランデル、コナーズといったNo.1経験選手はそれぞれ個性的で、さらにはメシール、マイケル・チャン、ヤニック・ノア、ルコントなどユニークな選手が揃っていました。テニスの歴史の中でも際立った時期だったのではないでしょうか。

それが理由かどうかはわかりませんが、この世代の選手たちが、現在の男子テニスプレーヤーのコーチととなるケースが続いています。マレーはレンドルをコーチとして迎いいれて二人の念願のウィンブルドンを勝ち取りました。それを習うかのようにジョコビッチがベッカーと、フェデラーがエドバーグをコーチとして契約したのです。日本の錦織圭がマイケル・チャンと契約をしたニュースを見ました。シャラポアとコーチ契約をしたコナーズは、あっさりと契約解除されたようですが、それにしても・・・どういうことでしょうか、このコーチ契約ラッシュは。

後は、ナダルがマッケンローかヴィランデルと契約すれば、一揃い当時と現代の選手でセットができるのではないかと思ってしまいます。

以前も書きましたが、この時代の名プレーヤーは、みんな何か弱点とそれを補う素晴らしい長所を持っています。今のプレーヤーは、いわゆるトップ4を含めて全員がオールラウンドプレーヤーであり、大きな欠点を持っていません。テニス技術は、明らかに今の選手のほうが上だと思います。一方、現在のトッププレーヤーは当時の選手たちと比べてもメンタルも安定しており、マナーもよく、私には彼らがレジェンドから何をコーチされるのだろうかと思ってしまいます。

もしかしたら、今のトップ選手はあまりに力が均衡してしまい、そこから抜け出すためのきっかけを手探りしているのかもしれません。レンドルとマレーのコンビの成功で、もしかしたら、レジェンドたちから新しい何かを学ぶことができると考えているのでしょうか。

今後、どのコンビが成功するのか、1980年代後半のテニスシーンを楽しんだ私には、2014年の男子プロ手巣を見る楽しみが一つ増えました。


Mecir's Tennis (206) 上半身(特に腕)の力を抜くこと

$
0
0
強いボールを打ちたいとき、振り遅れたスイングを挽回したいときがあります。このようなときには、どうしても強くラケットを振りたい、速くラケットを振りたいと感じるものです。

チャンスボールや甘いボールが来て相手を追い込みたい場合でも、相手のボールが深かったり厳しかったりして追い込まれた場合でも、上半身に力を入れないこと、腕に力を入れずにスイングすることが、メシールのテニスの重要な点の一つです。

王貞治はあれだけのホームランを打った往年の名選手ですが、それほど体格が立派だったわけではありません。その体格は、とても世界で最もホームランを打つ選手には見えませんでした。その王選手が現役時代に受けたインタビューで、こんなことを言っていました。「スイングは力ではない。スイングの力配分は、2→8→2が理想だ。」インパクトの一番力が入るところですら、8割の力で打つわけです。それが、あの体格でもホームランを打ち続けることができた理由の一つだったと思います。

メシールのグランドストロークのフォームは、非常にコンパクトです。特に、(何度も書いていることですが)テイクバックはラケットを持ったまま上体を回転するだけのシンプルでコンパクトなフォームです。利点も多いコンパクトなフォームですが、欠点もあります。たとえば、コンパクトなテイクバックの場合は、スイング全体でタイミングやリズムを取ることが容易ではありません。

たとえば、余裕があるときに強いボールを打つ場合がよくあります。このような場合、一般にはテイクバックを大きくとると思いますが、メシールのようなコンパクトなスイングではあまり大きなテイクバックを取ることができません。(とはいえ、テイクバックが全く変わらないわけではありませんが。)

テイクバックを大きくすることでで力が入りすぎると、テイクバックのスイング軌道が微妙にずれます。スイングが微妙にずれると、薄いグリップのフォアハンドでは、ボールが安定しません。その結果コントロールが乱れ、チャンスボールであるはずが、逆にボールがアウトしたりネットしたりすることがあるのです。

では、強く・速くスイングしたいときにはどうすればよいでしょうか?まず強調したいのは、「そのような場合でも、スイングスピードを変えてはいけない」ということです。しかも、その力は7割~8割程度です。つまるところ、メシールのテニスではフルスイングをしてはいけないのです。

正確に言うと、上体や腕の力でフルスイングをしてはいけません。通常のストロークと違うのは、下半身です。足や腰などです。足については、より正確なポジショニングをします。正確であればあるほど、強くスイングをすることができるからです。そして、腰の回転を速くします。速くといってもフル回転するわけではありません。通常よりも力強く振る程度です。

「下半身を強く使おう」という意識は、それだけで十分です。どこをどう使うと考えずに「下半身を使って強くボールを打とう」と思うだけで十分です。なぜなら、人は無意識に、体勢を崩してまではボールを強く打たないからです。つまり、いくら下半身を強く使おうと思っても、バランスを崩すことは(無意識に)ありません。

このことは、上体とは異なる点です。上体、特に腕を強く振るとスイングが乱れ、ラケット面が微妙にずれます。何度も書きますが、薄いグリップではラケット面のずれは致命傷です。下半身に力を入れても、入れすぎても、ラケット面がずれることはありません。

つまるところ、フラットドライブ系のフォアハンドでは、チャンスボールでは、速い球を打つことを目指すのではなく、より正確に狙った場所にボールを打つことを優先するわけです。

相手に押し込まれてテイクバックが遅れている場合も同じです。スイングを速くすることで挽回しようとしてはなりません。もともとがテイクバックがコンパクトなのですから、多くの場合は挽回は可能です。挽回をする際には、腕に力を入れてスイングスピードを上げるのではなく、テイクバックをよりコンパクトにします。または、どうしても力を入れるのであれば、背筋の力を使います。

しかし、その前に、フットワーク(正確にはステップワーク)やスイング(フォーム)で挽回することを考えます。足を踏み出して打つことは当然できませんので、バックステップを使います。または、バギーホイップなどを使います。これによりスイングの形が少し崩れるのですが、それでも腕の力を変えてはいけません。

全力でボールを打たないというのは、現代テニスの常識からはNGなのかもしれません。しかし、メシールのテニスにおいては、「全力でヒットしない勇気」「7割から8割の力でボールを打つ感覚」が重要となります。フルスイングをしなくてもよいボールを打つことができるということは、ボールと体の位置関係が正しいということでもあります。力が入りやすい位置にボールを持ってこなくては、「脱力のテニス」はできません。

しかし、もし、ボールの位置がずれたとしても、それでも力を入れてはいけないのです。その場合には、スイングを崩して打ちます。本来は望ましくないことですが、多少崩れたとしても、腕などの上半身に力を入れてしまうよりははるかにましです。実際、メシールにビデオを見ていると、実はスイングバランスが崩れていることが頻繁にあります。トッププロであっても、常に100%の位置でボールをヒットできるわけではないのです。

「上体を強く使わない勇気」は、本当に勇気が必要です。しかし、思い出してください。メシールが全力でボールをヒットしている姿を見せたことがあるでしょうか?そのことを信じて、7割、8割の力でボールを打つのです。

Mecir's Tennis (207) フットワークとスイングは一つ

$
0
0
このブログでは、「メシールのラケットスイングの方法論」に注目した記事を多く書きました。つまり、どちらかというとメシールのスイングの上体(上半身)の使い方について議論してきました。特にフォアハンドの分析を重点的に行いました。

最近、メシールのテニス(206)で下半身の重要性を書きました。そして、このブログのテーマも、今後はスイングの分析ではなく、下半身の使い方を含めたテニスのプレー全体の話題が中心となっていくと思います。メシールの独特で美しいスイングを活かして、どのようにゲームを戦うのかというのが、このブログの話題の終着駅です。もちろん、プレースタイル全体の議論についても、メシールのビデオの分析結果のまとめが中心となります。

なお、話題が上半身から下半身の使い方に変わっていくということは、テニススイングでは上体の使い方は大切なのではないという意味ではありません。むしろ逆です。正しいフォーム(上体)を身に着けていなければ、フットワークやステップワークなどの下半身を考えてもあまり意味がありません。正しいフォームが身についてこそ、そのフォームで動くボールをヒットする下半身の使い方を考えることができるのです。

で、さて、広いシングルスコートのあらゆる場所に飛んでくるあらゆるタイプのボールを打ち返すために、どういう意識を持てばよいでしょうか?フットワークは大切と誰もが言いますが、それはどういうことでしょうか?

最近、Youtubeで"Miloslav Mecir"で検索すると、二人の選手のビデオが混在してリストされます。ファンの方はご存じの通り、Miloslav Mecirとその息子(Jr.)です。Miloslav Mecir Jr.は1988年1月20日生まれですのでもうすぐ26歳です。(この記事は、2014年1月13日に書いています。)

往年のメシールファンは、息子であるメシール・ジュニアに往年のプレーを求めると思いますが、それはやはり酷ですね。おそらく、トッププロの世界ではメシールの往年のテニスは簡単には通用しないでしょう。

二人のミロスラフ・メシールのプレーを比較するわけではないですが、映像を見ていると明らかに父メシールが優れている点があります。それが、ステップワーク(フットワーク)です。以前も書いたのですが、メシール(父)のステップワークはテニス史上のプレーヤーの中でもトップクラスだったのではないかと思います。二つの、矛盾する評価を、当時のメシールはされていました。
  • メシールのフットワークは、ほとんど動いていないようにみえる。ゆったりと動いている。
  • メシールのフットワークは、猫のように素早い(ビッグキャット)。
この二つは、全く違うことを書いています。当時は、誰もその理由を解説してくれませんでした。私にも、この矛盾する二つは、ともに正しいように思います。どうしてなのだろう?

今、私はこんな風に思います。「メシールにはフットワークという考え方がなかったのだろう」、と。

例えば、コートの中心に立つと、コートの一番端に来たボールまでは、足を3歩動かすと届きます。特にメシールのフォアハンドは(当時としては珍しい)オープンスタンスでしたので、本当に3歩でボールを打つことができます。結局、「3歩動いてボールをヒットする」ですが、この「3歩動く」のと「ボールをヒットする」のを別の動きと考えるか、ひとつの動きと考えるかが、メシールのフットワーク(ステップワーク)の考え方の違いです。

ややこしいと思われるかもしれませんが、こういうことです。つまり、「テニスのスイングは足を3回動かしてボールを打つ」とスイングを定義してしまえば、フットワークという考え方はなくなるのです。ステップそのものがストロークの一部です。

これがメシール独特ののフットワークイメージです。メシールのテニスでは、フットワークとスイングは一つなのです。フットワークはスイングの一部でしかないのです。特に3歩目は、ボールに近づくためのステップではありません。3歩目はボールをヒットするための踏み込みとなるわけです。

こう考えることで、「ボールのところに走って行って打つ」という考え方は消えます。いわゆるフットワークはなくなります。これが、上の二つの矛盾するメシールのフットワークイメージの理由ではないかと思うのです。フットワークがないのですから動いていないように見えます。一方で、足の動きがスイングの一部ですからするすると(自然に、滑らかに)ボールに近づいていくように見えます。

この考え方には弱点もあります。その一つは、細かい足の調整はできないということです。多くのプレーヤーが「時間に余裕があれば細かい足の動きで調整する」と考えるでしょうが、メシールが横の動きにおいてグランドストロークでそのような細かいステップの調整をしているのを見たことがありません。メシールは最初から3歩でボールを打つと決めていますので、その3歩がボールに近づくステップでもあり、同時に調整するステップでもあります。

Mecir's Tennis (206)で書いた「上体に力を入れない」ということと、上に書いた「3歩のステップがスイングの一部」という考え方の延長線上にあるのは、次のイメージです。

ゲーム中には意識も力もすべて下半身にあり、3歩でボールを打てる場所と体勢を作ることだけに集中する。 

ボールが飛んできたら、とにかく3歩でよい形を作ります。よい形ができれば、腰の回転を強くすることで少しでも強い球を打つようにしますが、その場合にも上体には力を入れません。

メシールは、あるインタビューでインタビュアーに「あなたの腕の使い方は独特ですね」と言われてこう返事をしたそうです。「テニスは足でするものだ。」

これを、私は、いわゆる「テニスは足ニス」ということかと思っていたのですが、実は違うのかもしれません。メシールは、コート上で下半身のことしか考えていなかったのではないかと思います。以下にボールに対してよい位置で3歩目のステップでボールをヒットするのか、それだけを考えてグランドストロークをしていたのではないかと想像するのです。相手がどんなボールを打ってきても、スピン系のボール、スライス系の切れていくボール、フラット系の深い強い球、どんなボールが来ても、3歩目でボールを打つスイング。これがメシールのテニスだと思います。

Mecir's Tennis (208) フォアハンドでのテイクバックのラケット面

$
0
0
フォアハンドのテイクバッグでのラケット、腕、手首の動きはとても複雑で、おそらく文章で表現するのは無理なのではないかと思います。言い換えれば、これまでに誰も正しいラケットの動きを説明できなかったのではないかと思います。

と言っても、では私が解説できるわけではないのですが、ヒントになりそうなことを書いてみたいと思います。

テイクバックの前半では腕を動かさず、腰の回転だけでラケットを引くことは何度も書いています。その結果として、メシールのフォアハンドでは、男子プロテニスプレーヤーのトップ選手の中で唯一、ラケットヘッドが下を向いてテイクバックします。

そのあとは、相手の打ったボールにもよりますが、大なり小なりのテイクバックが入ります。(まったく腕を動かさないテイクバックはNGです。スイングには、かならず「遊び」の部分が必要です。車のアクセルと同じです。)

  • その際のテイクバックでは、まず、ラケット面を必ず伏せた脳内イメージを持ちます。
  • さらにラケットヘッドをネットに向ける脳内イメージを持ちます。

実際にはラケットヘッドはネットを向きません。4時から5時ぐらいの方向を向きます。(0時がネット方向。)しかし、これは、ラケットヘッドが6時以降(6時、7時、8時方向など)を向くことを避けるための脳内イメージです。ラケットヘッドは、絶対に6時方向を向いてはいけません。

ラケット面が伏せられている(脳内イメージを持つ)限りは、そのあとのテイクバックは比較的自由です。相手のボールが遅い場合は大きなテイクバックでもよいですし、速い場合は小さなテイクバックで構いません。相手のボールや自分のうちタイボールに合わせます。ただし、ラケット面は伏せたままです。

ラケット面を伏せたスイングイメージ(脳内イメージ)として有効なのは、ラケットを伏せたままラケット面の法線方向にラケットを動かすことです。また、手首(リスト)を使わないことです。これにより、ラケット面が間違えても上を向くことがありません。

そこまでこだわるのは、フラットドライブ系のフォアハンドでは、どうしてもラケット面が開きやすいからです。これまで何でも書いていますが、インパクトではラケット面がボールに垂直にあたるからと言って、テイクバックでもラケット面が開いてはいけないのです。伏せた面がフォワードスイングででだんだん開いていき、ボールをヒットするときにちょうどラケット面がボールに垂直になるのです。

フォワードスイングは、再び腕を使わず、体の回転でラケットを運びます。腕を使うのはインパクト直前からです。インパクト直前からは、逆に、腕を使います。それも、上と同じ「遊び」が必要だからです。この小さな遊び(腕の操作)で最終的なボールコントロールをします。

テイクバックでラケット面が伏せられていても、体の回転に合わせてフォワードスイングをすると、インパクト時ではちょうどラケット面がボールに垂直に当たります。言い換えると、そうなるようにフォワードスイングをします。イメージとしては、インサイドアウトで下から上にラケットスイングをすることで、伏せられたラケット面がインパクトで垂直になるはずです。

(このあたりの3次元的なラケット面の動きは文章にするのはなかなか難しいです。といっても、逆に、絵にするのも難しいのですが。)

フォワードスイングでは、フラットドライブ系のボールを打つ場合にはインパクトからラケット面の法線方向にラケットを振ります。スピンポールを打ちたければスイング方向がややフレーム方向になるようにスイングします。このあたりは、打ちたいボールに合わせて加減を変えてやることになります。スイングスピードや腕の力は打ちたいボールよって変えてはなりません。同じスピードで、同じ力で、ただしスイング方向とラケット面の法線方向を少し変えるだけです。

Mecir's Tennis (209) プロのテイクバックではラケットヘッドが後ろを向かない理由

$
0
0
多くの(男子)プロに共通していることの一つに、テイクバックでのラケットヘッドの向きがあります。アマチュアはテイクバックでラケットヘッドが後ろを向きますが、プロは後ろを向きません。

具体的に書くと、プロのテイクバックではラケットヘッドの向きが(ネット方向を0時として)6時方向または7時〰8時方向を向きます。

トッププロは、テイクバックトップでも6時より前方向になります。つまり、アマチュアのほうがテイクバックが大きいわけです。これはどうしてでしょうか。

以前、三角巾の図でテイクバックの開始を説明しました。つまり、テイクバックではラケットは(脳内イメージで)ネット方向を向きます。実際にも、レディーポジションでラケットヘッドはネット方向(0時方向)をむいていますから、そこからだんだん1時、2時と進んでいくわけです。

このヘッドの回転は、腰の回転です。テイクバックでは腕を使わないのですから、腰の回転でラケットヘッドは0時から1時、2時と進んで行くわけです。

プロは、子のテイクバックを腰の回転で先導し、そのあとのフォワードスイングの前半も腰の回転を使います。つまり、腕は(まったく動かさないというわけではないものの)動かさないイメージです。腕を使い始めるのは、インパクト直前からです。

アマチュアは、フォワードスイングをどうしても腕で振ってしまいます。そのためには力とラケットの勢いが必要で、そのためにラケットを大きく引くことになります。ラケットヘッドは、勢いをつけるために、4時、5時、6時…とどんどん後ろを向いていくわけです。

プロはフォワードスイングを腰の回転で開始しますから、ラケットヘッドは脳内イメージでは2時ぐらいでフォワードスイングが始まります。実際にも、5時ぐらいになります。

ポイントは、(テイクバックはもちろんのこと)フォワードスイングを腰の回転でリードできるかどうかです。これがプロとアマチュアの違いです。

Mecir's Tennis (210) フォアハンドアプローチショットのコツ

$
0
0
フラットドライブ系のフォアハンドは、スピン系と比較して、アプローチショットではやや不利です。スピン系では、ハードヒットしてネットに出ても、回転を大きくすることでベースラインより内側でボールをバウンドさせることができます。コントロールが生命線であるフラットドライブでは、ネット近くでボールを(強く)打つことは、ベースライン付近よりも打ち込める範囲が狭くなります。しかも、アプローチショットでは足を動かしながらになりますので、さらに微妙なコントロールは容易ではありません。

しかし、もし、ヘビースピンでアプローチショットを打つのであれば、それはフラットドライブ系の(つまりメシールの)テニスではなくなってしまいます。フラットドライブ系で、いかに安定したアプローチショットを打つか。これは、案外難しいテーマです。

そこで、フラットドライブ系で安定して(つまり正確なコントロールで)アプローチショットを打つ工夫が一つあります。それは、ラケットを短く持つことです。ラケットを短く持つことで、ボールに対するパワーは小さくなりますが、ボールコントロール精度が向上します。もともと、アプローチショットではネット方向への勢いがあります。つまり、大切なのはパワーではなく、前に動きながらでも狙った場所に正確にボールを運ぶコントロールです。

が、もちろんですが、アプローチショットでラケットを短く持つことはできません。ショットによってラケットの持つ場所を変えるのはあまりに高等技術であり、一般には(メシールのテニスでは)そのような方法は望ましくありません。(そんなことができる人がいるのでしょうか?)

そこで、ラケットを持ち替えずにラケットを短く持つ方法を紹介したいと思います。それは、人差し指の付け根を意識してスイングをするのです。通常のフォアハンドグランドストロークでは、メシールのスイング(フラットドライブ系)では小指の付け根に一番力が入ります。これにより、ゆっくりと大きなスイングができます。

が、アプローチショットで短くスイングをする場合には小指の付け根を意識したスイングを人差し指の付け根の意識に切り替えます。これは、人差し指の付け根だけで打つという意味ではありません。あくまで、意識をそちらに置くということです。(小指の付け根も同じ。)もちろん、スイングそのものを変える必要はありません。スイングは通常のストロークと同じです。

これにより、ラケットを短く感じ、その分だけボールが飛んでいきにくくなります。(そして、ボールが飛んでいきにくいという意識も重要です。)また、ラケットが短くなることでスイング半径を小さく(やや速く)することができます。ラケットが短い分、コントロールもしやすくなります。

同じアプローチショットでも、意図的に大きなスイングでゆっくりとラケットを動かして打つ場合もあります。(特に、足を止めて打てるような余裕がある場合など。)このような場合は、小指の付け根を意識したスイングで大丈夫です。アプローチショットによって、意識する指を換えればよいのです。
Viewing all 249 articles
Browse latest View live